魔城潜入

わたくし最近、お引越しをしまして。
近隣の散策をしとるのですが、ごく普通の近所の商店街のど真ん中に何故か冥土喫茶が存在しているとの情報が・・・。
あの冥土のメッカアキファバラとも何の関係性もないし、それほど栄えているわけでもないような普通の商店街になぜ冥土?
・・・気になる。
断っておきますが、私は冥土には何の性的興奮も起こさない性質なのですが、どんなもんなのか、社会勉強として死ぬまでに一度体験はしてみたいとは常々思っておりましたので、仕事終わりに行ってみることにしました。
商店街のちょうど中腹くらいにある不動産屋かなんかの2階に、本当にありました。
周囲の目線に注意を払いながら誰も見ていない隙を狙って階段をあがると、もう既に階段がピンクです。魔界の入り口に来た実感をそこで噛み締めました。
店内に入ると・・・魔界の門番・冥土があらわれた。コマンド?コマンド?
「おかえりなさいませ」。
来た。生涯初おかえりなさいませ。人生初ご主人様。もう後には戻れない気がしました。
冥土のレベルははっきり言って、想像以上に高かったです。
2人いたんだけど、1人はまぁお付き合いとかしてもまったく問題ないくらいのフツーの子。もう1人は正直かなりかわいかった。芸能関係っぽい肩書きがついてても不思議じゃない位のレベル。もっと水木しげる作品に出てきそうなのが出てくるかと期待してたんだけど。
そんなレベルの奴がこんな僻地で何やってんだ。もっと何か金になることあんだろバカチン!って怒鳴ってやりたいとこでしたが、私はもうすでに恥ずかしさのあまり冥土さんと目を合わせることが出来ないくらい縮こまっていたのでそんなの無理でした。
客は私の他に1人。明らかにAボウイのオーラを醸してる男性。ふと見ると手に何故かアニメ絵トランプを持っていて、全部じゃなく数枚をなんか切ったり扇状にしてこねくりまわしたりととにかく手元が落ち着いていない。
というか、何をやってるのか全く意味がわからない。場に相応な奴だなと思いながらメニューに目をやる。
とりあえず腹が減っていたので食事物をみると、この店はパスタが名物のようだ。
「ルパン」「次元」「五右衛門」「不二子」「銭形警部」
・・・パスタの名前がモンキーパンチ。
何故モンキーパンチなのかはさっぱりわからんが、とりあえず海苔がのってるという「次元」に決めました。
変なソフトドリンクや変なパフェに加えて、意外にもアルコールが充実していた。
ビールからカクテル・サワー、果てはウイスキー(I.W.ハーパーとか)まであってちょっと驚いた。
普通にビールにしようかとも思ったんだけども、せっかくだからと思い、ものすっごい勇気を出して「ねこみみサワー」を頼みました。
もうね。口に出すのが恥ずかしくて恥ずかしくて気が狂うかと思いました。
他にも色々頼みたかったのですが、これ以上恥ずかしいメニュー名を口にするのは事実上不可能だったのでとりあえず注文してその後は暇つぶしにトランプの奴を観察してました。
すると奥からなんか普通の格好をしたちょっと責任者っぽい女性が出てきた。
実はこの人、私が入店したときから奥にいておかえりなさいませとか言ってて雰囲気ブチ壊してんなーとか思ってたんだけども。
「あのー、来週ローゼンメイデンDAYがありまして云々かんぬん(よくわからない専門用語)漫画に出てくる料理とか作りますんでよろしかったら来てください」みたいなことを言ったとたん、隣のトランプが堰を切ったように「この業界の人しかわかんないよね〜ローゼンメイデンは」とかほざきだす。どこの業界人だよお前は。
で、変なイラスト集を見せられて「この○○ちゃんを手芸で作ってるんですよ〜」とか言って私以外の全員が盛り上がる。
This is 地獄。
そもそもローゼンメイデンてなんじゃい。アイアンメイデンなら知ってるけども。
もはや私の手持ちのカードは「適当な相槌」「つくり笑顔」。まさに防戦一方。本当の地獄絵図、。
ただ、ここでひとつ気づいたことがある。冥土喫茶というものは。
隣のトランプのような現実世界ではまともに女性と口を聞けないようなボーイ達が、自分と同じ価値観を持った女性と接することで会話を愉しむ場であるのだと。それゆえ、冥土に扮する女性たちは、いかにして会話を紡ぐか、ご主人様を愉しませてあげないといけないというプロ意識を持って接する仕事なのだと。まぁ早い話がヲタ専門キャバ嬢みたいなもんなんだろうけど、なんか「冥土喫茶」っつーものの存在意義がわかった気がした。
みたいなことを思ったような思わないような感じでいたらねこみみサワーが出てきた。
別に何の変哲もないフツーのサワーだなとか思ってたら、冥土が「おまぜいたしま〜す」って混ぜだした。
10秒・・・20秒・・・50秒・・・あの、混ぜすぎじゃないのかしら・・・?
1分は混ぜられたねこみみサワーは、結局ただの柚子はちみつサワーだったのですが、別にまずくはなかったです。
すると、階段から誰か上がってくる音が。冥土さんがそれに気づきスタンバイ。
入ってきたのはスーツにロングコートの男性。
冥土「おかえりなさいませ」
ご主人様「ただいま。」
うわぁ!!ただいま言うた!ついに本物のご主人様が帰ってきちゃった!!
本物のご主人様は何故かものすごく不機嫌で、注文も、
冥土さん「あのご注文は?」
ご主人様「・・・ぷら」
冥土さん「はい?」
ご主人様「天ぷら」
冥土さん「え」
ご主人様「天ぷら!!」
天ぷらなんてあったっけか!?
冥土さん「かしこまりました」
かしこまっちゃったよ!!
実際はレッドアイって言ってたらしいんけど私には天ぷらにしか聞こえませんでした。
てゆーか何でコイツこんな機嫌悪いんだろう?ツンデレプレイなのかな?
このご主人様のせいで冥土さんも怯えちゃって完全に店の空気は最悪に。
トランプの奴もトランプをいじくりながらご主人を睨み付けている。
そんな中で次元(海苔が乗ってる豚肉のパスタ。ごく普通)が出てきちゃったんだけど、俺ね、こんな変な緊張感の中でメシ食ったの生まれて初めて。
もうズルズル音も立てられないような緊張感と、何故か次元食ってる俺を2人の冥土がめっちゃ見てるの。恥ずかしさでもうホント消えてなくなりたかったよマジで。
ご主人様は手に取った漫画がつまんねえとかでよりご立腹になってるし。知るかよそんなの。
もう完全に生き地獄だったので速攻で次元食って出ようと立ち上がったところ、冥土さん2人のプロ意識の本領発揮。
身長ネタで捕まって大騒ぎ。あああもうトランプめっちゃ俺のこと見てるぅぅぅ!!!もうやめてぇぇぇぇ・・・・
 
ようやく冥土の門をくぐったのだが、ファイナルサービスで冥土の一人(かわいい方)が階段の下までお迎えしてくれた。
しなくていいよもう・・通行人見てるし・・・・。でも最後にひとつだけ、聞いてみた。
「あの、トランプの奴なにもんですか」
冥土さん「あ、常連のご主人様でなんかマジシャンらしいですよ〜アマチュアの」
私も完全に壊れてたので何でこんなくだらない事を聞いてしまったのかわからないんだけど、想像に難くないくだらない情報を入手してしまい、どうにもならないような精神状態で魔城を後にしたのでした。
 
いや、ホントね、ホンット〜に・・・もう絶対無理だわ・・・。